1勝100敗 婚活回想録

婚活体験談をおもしろ、おかしく書いてます

久しぶりの異業種交流会

俺はこの日、いつものようにスーツを着てラウンジに向かうことはしなかった。

毎週、同じことをやっていては疲れるし、芸がない。

その代わり、俺はオシャレな服を着てパーティ会場に足を運んでいた。

今日は異業種交流会の日だ。聞こえはいいが、出会いを求めている男女が集まってぴーちくぱーちく喋るやつだ。

お見合いと違って、肩ひじを張る必要もないし、緊張することもない。

友人と一緒に3人で参加だ。これと言って仲良しというわけではないのだが、かといって嫌いあっているわけでもない。3人とも出逢いに飢えていただけだ。

 

もしかしたら、その日のうちに魅力的な女子といいことがあるかもしれない。

期待と股間を膨らませて、早足に会場に向かった。どこで誰が見ているか分からないぞ、偵察兵は人ごみに紛れて俺たちを観察しているはずだ。

こういう焦りは、すぐに偵察兵に見つかって、余裕がない男と見做されて減点になるため、落ち着いて行動をすることが大切だ。

落ち着いて行動しなくてはいけない代表格としては、避難訓練があるが、実際は机の下でスマホをいじっているものだ。

今日は避難訓練ではないので、机の下にもぐることはないが、連絡先交換でスマホを出さないといけないのだ。

 

会場は男女合わせて50人くらいいただろうか。

みんな思い思いに行動をしているなんて、行儀のいいものではない。出逢いを求めた男女入り乱れの平成合戦だ。あっちでも、こっちでも勢いがあるトークが聞こえている。俺もこの合戦の波に乗って重低音を効かしたトークで女子たちを落としていかないといけない。

俺は気になる2人組の女子(コンビTと呼ぶこととしよう)に定めをつけて、ずかずと話しかけにいった。

ここでのポイントは、ハリウッド映画のようにカッコつけて話しかけてはいけないということだ。自分はブラッド・ピットになりきっても、相手はアンジェリーナ・ジョリーになってはいない。アンジェリーナ・ジョリーにならなくてはいけない、という自覚すらないはずだ。

なので、普通の話し方が、しっくりくる。

 

そういえば、昔予備校の物理の先生が「カッコつけて間違えるくらいなら、ださくても確実にできる方法で解くべきだ」と言っていた。

俺はいい言葉だなと思った。

 

彼女たちとは10分程度話をしただろうか。うわべだけの会話が主で、もう一歩突っ込んだ話題にまで入れなかった。しかも連絡先交換ができる雰囲気にすることすら、彼女たちは許してくれなかった。

これは俺に非があったと思っている。普通に喋ればいいのに、ブラッド・ピットが登場してしまったからだ。あんだけ、アンジェリーナ・ジョリーはいないよ!って自分に言い聞かせていたのに。

 

俺は次から次に話かけに行く勢いだったのだが、仲間2人はどうも大人しい体質なのか「いや、ちょっと」と怖じ気ついて、グラス片手に男二人で固まってしまった。俺は、こいつらと喋るために、高い会費を払ったわけでもないし、目の前の脂っこいパスタのためでもない。ただ、食事は料金に含まれているから、たらふく食べないと損だ。

俺は一人で、多くの女子に話しかけた。女子2人でも3人でも躊躇せず話しかけた。しかし、多勢に無勢でグループの男たちが割り込んでくると、どうしても負けてしまう。あいつら応援に来いよと思って、会場中を探すと、端っこの方でケーキを頬張っている。俺のケーキは残しておいてくれ。

 

結果、多くの収穫もなく、友達にも裏切られ、俺は力尽きて灰になり、そして星になった。

しかし、この会にはなんと2次会という敗者復活戦、神のご慈悲が用意されていたのだ。もちろん参加するに決まっている。2次会の場所に移動する際、さっきの2人組コンビTがいるかを、確認したが姿はなかった。帰ってしまったのか、他の男たちと別で2次会をやっているのか。存在するのかさえ分からない男に嫉妬を覚え、あの時連絡先交換をしなかったことを悔やんだ。

 

2次会は男女の数は約半数になっていて、よく見ると知らない女子ばかりだ。1次会であんなにもがいたのに、まだまだお宝があったってことか。その中に、俺好みの子がいた。長い髪が印象的でクールな雰囲気を持つ子だ。今宵、俺のシンデレラは、このクールちゃんだ。俺は尻尾を振って話かけた。ブラッド・ピットジョージ・クルーニーも登場しなかった。登場したのは、お調子者の日本人の男だけだった。

クールちゃんは、最初は静か目に話を聞いているのが主だったが、場が和むと緊張はしているものの、それなりに喋ってくれる。俺の婚活の中でも上位に入る楽しい時間だったはずだ。俺はクールちゃんと連絡先を交換した。

帰りの電車で、俺はクールちゃんに早速お礼のLINEを送った。あと、コンビTの連絡先を入手できなかったのは悔しかったな。あのとき食い下がって連絡先を聞いておけば…俺は、結構引きずるタイプだ。あまりいい性格とは思えない。

しかし、近い将来俺はそのコンビTに再会するんだな、実は。

そんなこと、当時全く考えられなかったけど。