1勝100敗 婚活回想録

婚活体験談をおもしろ、おかしく書いてます

地方遠征、いざ出陣!

お見合いサイトでは、居住地別で検索することができる。関東の人は関東で探すのがナチュラルだ。しかし、俺は知っていた。地方の人で将来は東京に住むことを夢見る女性が数多くいることを。また、特に将来住む場所にこだわりがない人も多数いることを。

みんなは知らない真実だ、たぶん。

俺はある日、ポテトチップスを食べながら、スマホでペラペラお見合いサイトの女性たちをチェックしていた。この日のポテチはコンソメパンチだ。普段ならノリ塩を食べるのだが、この日はどういうわけかコンソメパンチだった。スマホの画面が汚れるのが嫌いな俺は、右手でスマホ、左手でポテチだ。俺は画面が指紋とか皮脂で汚れ切っているやつが許せない。合コンとかでそんなスマホをだされたら、その時点でアウトだ。心がせまいとか、潔癖とか言われるが、別にいいじゃないか。

 

で、俺は思った。会いたい人がいるなら自分が地方遠征に行ってもいいんではなかろうか?と。

北海道から鹿児島まで新幹線が通ってる時代だ。1時間のお見合いのために往復4時間かけるなんてばからしい?いや、面白いだろ。今しかできない経験だ。

しかし、行くからには「会いたい」と思う女性で、且つ「会ってやってもいいぞ」という2つの条件が必要だ。これは難しい。

今思えば、交際になったときに、この距離が足かせになるのだけど、俺は全くそんなことを考えていなかった。さすが俺だ。後先考えない行動力。若さは不可能を可能にする、無理が通れば道理が引っ込む。

 

ペラペラ見ていると、名古屋に素敵な女性がいた。見るからに可愛い。名古屋まで行く以上は、見定めはしっかりしないといかん、失敗は許されない。

俺は宝石鑑定士となった。そしてスタントマンになった。

写真を拡大したり、斜めから見たり、光を当てたりと、そこになんでも鑑定団がいたら、さぞ真っ青になっていたに違いない。

記念のお見合いかもしれない、いや、意外と向こうは俺を待っているかもしれない、もっともお門違いで何も起きないかもしれない、くよくよ悩んでいても仕方ない。ということで、俺は申し込みボタンを押した。何度も言うが、俺は優柔不断だ。優柔不断選手権があれば、上位30位には食い込めるだろう。1位にはなれないのかって?

1位になるやつなんて、どうせ何も決められない男だろ。俺はそういう、決められない男が嫌いだ。俺みたいに即断即決になってほしい・・・・あれ?

 

数日後、その名古屋ちゃんからOKの連絡が来た。おお!!懸賞に当たった時の気分だ。ロト6で1000円が当たったときの気分だ。それ以上の喜びは今まで味わったことはない。よくよく考えれば、遠く離れた東京から来る人間に会いたいと思ったもんだな。行く方も行く方だけど、会う方も会う方だぜ。

 

当日、俺は新幹線に飛び乗った。2時間弱で到着のようだ。

俺がミスター付け届けと呼ばれていることは、意外と知られていない。お土産はちゃんと用意している。もっとも、どこにでもあるようなお菓子に、ただ「東京」と印刷したようなもんだが。

 

新幹線は快適だ。ビジネスマンもいれば、家族連れ、友達同士もいる。お見合いに行く人はいるのだろうか?俺以外に1人くらいいてくれよ。寂しいだろ。

名古屋に着くと、指定されたラウンジに向かった。おそらく名古屋ではメジャーなお見合いスポットなのだろう、しかし外様の俺には難しかった。いや、本当に難しかった。どうして、名前は立派なのに、入り口が分かりにくいエレベーターなんだよ。ドラクエの隠しドアを見つける方が容易だ。

到着して10分ほどすると、彼女がやってきた。ふむふむ、思った通りだ。俺は呪文のように暗記している彼女のプロフィールに沿いながら、時折、名古屋初めてなんすよ、と合いの手を入れながら話をした。彼女は、独特な表現で仕事のこと、家族のことを話してくれた。大した内容でなくても、彼女の話し方、表現一つで面白い話に大変身だ。お、その言い回し使わせていただきまっせ、ここでその表現を使うか、ふむふむ…勉強になる、と技を盗んであっという間の1時間だった。話し上手を自称していた俺だが、本当に勉強になった。

彼女は、折角名古屋まで来たのだから、何か食べて帰れという。そうだな、確か名古屋には名物がいくつかあったはずだ。彼女のアドバイスに従い、俺はひつまぶしの店で一番高い料理を注文した。だって、もう来ないかもしれないじゃん。彼女可愛くて楽しかったなぁ、もっと会いたいなぁ、彼女はどう思ってくれたかなと、俺は反芻していた。

ひつまぶしが運ばれると、俺はひつまぶしユニークな食べ方の注意書きを読みながら、ウナギを味わった。彼女のことなんてどこ吹く風だ、ひつまぶしが美味しいだんから、それで十分だろ。

 

帰りの新幹線の中で「交際希望」を送った。翌日、彼女からも「交際希望」となり、晴れて交際となった。いやはや、名古屋までひつまぶしを食べに行った甲斐がありましたよ・・・・あれ?