1勝100敗 婚活回想録

婚活体験談をおもしろ、おかしく書いてます

Mちゃん登場

俺がMちゃんと知り合ったのは、とあるお見合いである。ほのぼのした感じが可愛くて、申し込みをして会ったという一般的な流れだ。
Mちゃんとは都内のホテルのラウンジで会うことになっていた。このホテルの周りには、他にラウンジらしいラウンジがないからか、いつも混んでいる。必ず渋滞が発生する高速道路の渋滞と同じで、このラウンジも渋滞を引き起こしていた。俺は素早い車線変更で、ラウンジの列に滑り込んだ。割り込みしてくる人はいないようだ。煽り運転は皆無だ。平和な渋滞だ。Mちゃんが来る30分も前に並んで場所取りをするというのは、渋滞が嫌で早朝に出かけるようなもんだ。ラウンジの周りには男との待ち合わせを待っている女子が、これまたたくさんいる。
このラウンジも他のホテル同様、周りが非常に広く、さらに柱が多いので見つけにくい。シャイな女子が柱の陰に隠れていたら、見つけられない。俺はかくれんぼの鬼となり、出会いの鬼となりMちゃんを探して見つけ出した。
 
Mちゃんは、非常に緊張しているようで、ロボットのようにぎくしゃくしていた。こういう場合は、プロフィールに書いてあることに沿って話をした方がいいということを俺は知っていた。そしていつものごとく、要所要所で、ドラムのシンバルのごとく軽いジョークを入れた。俺はドラマーとなり、彼女は演奏家となり、俺たちは楽譜通りに演奏をしていった。当然、ぎこちない演奏だったけど、俺は満足していた。


さて、このプロフィールに沿った話をされると、相手はどう思うのだろうか?
そんな質問すんなよ、プロフィールに書いてあるだろうが!となるのか、

はたまた、予定調和ということでこれが王道なのだろうか?
そうなると、プロフィールに記載されていない話をすることは、相手を混乱させるだけになるのか。

いやいや、まずはお互いのフィーリングなんだから、レストランのバイキングみたく話したいことを話せばいいんだよ、が正解なのか?
 
幕の内弁当がいいのか、松花堂弁当がいいのか、バイキングがいいのか…結局はその時の気分、空気で決まるのかな、と俺は結論付けた。
俺はこの考えが今でも正解だと思っている。
一度他の人がどういう話をしているのか、聞いてみたいもんだ。
 
ちなみに、相手がぎこちないと、こちらもぎこちなくなる。俺は雰囲気に押されるほうなので、この空気に飲み込まれてしまい実力を発揮できず失敗することが多い。Mちゃんが唱えた呪文「ギコチナクナッテシマエ」を食らって、HPが一気になくなった。俺はそれでも戦った、そして肩を落として傷ついた身体を引っ張って帰宅した。
彼女の呪文さえなければ、俺は勝っていた。毎回そんなことを思っているので、自分のバカさ加減に呆れてくるのだが。


ダメ元で俺は「交際希望」の旨をシステムに入力した。ところが、予想に反して彼女からも「交際希望」が来ていて、俺は彼女の連絡先をゲットした。瀕死になって戦って得たものは、大きかった。
彼女は電話でも、ぎこちない呪文を唱えてきた。しかし、俺は抗体や呪文を跳ね返す能力を身に着けていたので、HPがなくなることはもうなかった。
 
Mちゃんと食事の日、俺は仕事の関係で15分も遅刻をしてしまった。いくら、途中で彼女にお詫びの連絡を入れていたとはいえ、大失態だ。JRでは、1分遅れると、遅延事故になるらしいので、俺はJRで働くことはできない。学生の時JR東海に入りたかったが、エントリーシートで落ちた。理由はこれだったかもしれない。そんな俺を快く迎えてくれたMちゃんと、二人でメニューを覗き込んだ。優柔不断な俺は、なかなか選ぶことができないが、1回目のデートでそれがばれてはいけない。なかなか選べないってことは、どれを頼んでも同じだろう。
適当に3つくらいメニューを挙げて、彼女に選んでもらった。これなら、優柔不断とは思われない、我ながら姑息な作戦だ。
 
この初デートは、お互いのことをさらに深く知ることができるチャンスだ。Mちゃんは、大人しいのんびりした性格の方のようだ。
この後、俺はMちゃんと数回デートをすることになるのだが、そこでMちゃんの本性が分かってくることになる。