1勝100敗 婚活回想録

婚活体験談をおもしろ、おかしく書いてます

名古屋ちゃん、上京!後編

俺の予想に反して、美術館は長蛇の列だ。俺は名古屋ちゃんに試されてる。こういう時こそ、冷静に対応をしなくてはいけない。そして、待ち時間を退屈させないのが、俺に課せられた使命だ。現状把握、原因解明、対策というのが仕事のステップとしてあるように、このデートもそれに従えばいい。
俺は名古屋ちゃんに断りをいれて、列の最前列に行き混み具合と、原因を確認した。原因は人気だからなのだが。
俺は、さもしっかり調べてきたぜという様子で、名古屋ちゃんに偵察の結果を報告した。
 
人気だから混んでるよ
 
誰もが納得の話だ。これで、異を唱えるやつはそうはいない。
俺の簡潔な説明に納得した名古屋ちゃんと俺は、少し動いては止まるを繰り返す列の中で、他愛もない話を続けた。
 ここで成功する秘訣を披露しよう。
退屈させないために面白い話題を出さないといけない。しかも、発展性がない話題はNGだ。また、ずっと喋り続けると、鬱陶しさしかないので寄せては返す波のように陰陽をつけなくてはならない。
そのために、行列に並びました時用に、予め話題を用意しておきたい。
普段見たこと、感じたことをネタとして持っておこう。
多少のデフォルメは、問題ない。どうせわかりゃしないさ。
 
しかし、俺はこの時ネタは全て出尽くしていた。撃つ弾がないのだ。銃という口だけあっても、役に立たない。本当は、もっとネタはあるのだが、初デートで、相手に嫌われない題目が見つからなかった。
この世で見つからないものは、宇宙人、カッパ、ネッシーとなっているが、この日をもって、嫌われない話題が仲間入りした。
 
空っぽの頭をフル回転させて、行列に並んでる時、飛行機のようにタダ静かに乗ってる時は何をするのか?といった話題を考えた。
レオナルドダヴィンチでも発明できなかった話題だ。特許なんてものはないから、デートで使ってください。
 
結局1時間ほど並び、やっとこさ美術館の中に入れた。彼女の趣味をこの時間で観察することにした。名古屋ちゃんが立ち止まる絵画を、俺もじっくり見たが絵心がないから、良さが分からない。
ここで下手な感想を言ったら、バカと思われるかもしれないから黙ってるしかない。

 

この美術館広すぎだよ、どこまで歩かせるんだよ。ずっと並んで立ちっぱなしで足が疲れてるのに、まだ歩かないといけないのか。足は疲れるわ、退屈するわで、眠くってきたよ。他にやることがないので、俺は絵を見つめる名古屋ちゃんの横顔を、じっーと見ることにした。
おっ、この角度で見ると可愛いぞ、まつ毛長いねー、肌少しかさついてるね、なんて観察していた。余計なお世話だよ。
そして、たまにコメントをする彼女に、相槌を打って、私もこの絵関心がありますよアピールをする。


このように、趣味が全く違う人同士結婚したらどうなるのだろうか?
異なる趣味があるから視界が広がるという意見もあれば、趣味が合わないと一緒にいても破綻するということを言う人もいる。
俺の考えは、趣味が違くても別にいいんじゃね?である。
違う趣味同士で結婚してる人は、たくさんいるしね。でも美術館は辛かった。
 
 
全部見るのに確か、1時間半くらいだったかと思う。眠くて疲れていた俺には、長い時間に感じた。
美術館を後にした俺たちは、疲れた身体を休めるためにホテルではなくカフェに入った。疲れたからちょっと休んで行こうよ、とは言えない。ちょっと疲れたからお茶でもしましょう、が適切な表現だ。
ケーキセットを頼み、お約束の半分づつにして親近感を増す。
疲れからか口数が少なかった俺たちだが、ケーキを平らげる頃には元気モリモリに復活だ。
 


実はここから、覚えてないのだ。

ケーキが終わった頃には夕方だったはずだ。彼女の帰りの時間を考慮して、早目の夕食にしようと考えていたが、お互いお腹いっぱいになっていたから、夕食は食べなかった…それとも何か食べたか?
思い出せない。帰りは品川で彼女が新幹線のために走って去って行ったことを覚えてる。その後、彼女から無事新幹線乗れたよー、楽しかったよーとLINEが来た、ここは鮮明に覚えてる。そして、意気揚々と俺も帰宅した。
 
次の日からもLINEのやり取りは続いた。遠距離の恋人はこういう生活をしてるのか、ふむふむ。これはこれで良いじゃないか。しかし俺は、他の女性とも会おうとしている、つまり彼女もまた然りで、他の男と会っているわけだ。
のんびりしているわけにはいかないし、この遠距離という不利な立場を考えれば、彼女は地元の名古屋の男性と頻繁に会うだろう。
LINEという文字だけのお付き合いでは、そのうち終わってしまうだろう。
振り返ると、彼女からの返信は以前より素っ気なくなっている。
そこで、特にこれといった用事はないのだが、俺は電話をしてみた。
すぐに電話に出てくれた彼女と、少しの間話をしたが、話題が出てこない。
これは、彼女と交際を続けること自体に無理があるようだ。どっちが悪いとかではなく、相性の問題だ。遅かれ早かれ終了になるに違いない。
 


俺は交際終了にすることに決めた。
こんな時にだけ律儀な俺は、自分からふるのは申し訳ないと思い、彼女からの交際終了を待つこととした。
形だけとは言え、彼女が男にフラれたと思わせないようにね。
自己満足だけど、遠距離の中俺に付き合ってくれたせめてものお礼だ。