1勝100敗 婚活回想録

婚活体験談をおもしろ、おかしく書いてます

Mちゃんの正体

Mちゃんとは数回デートしたので、どのデートが何回目なのかとかは全く覚えていない。数回のデートでMちゃんは、少しづつ砕けていってはいるが、それでもどこかぎこちない。だけど、俺は一緒にいて嫌じゃないし、特に気を遣わなくていいことに気がついた。将来を見据えるのであれば、これはこれでいいんじゃないか。


あるデートの帰り道、俺はちゃんと付き合ってほしいと彼女に伝えた。この告白ってやつは、どんなに経験を重ねても緊張してしまう。
いつ言えばいいのか?どういう言い方がいいのか、振られないだろうか。昔、こう言って振られたから、言い方は変えた方がいいのではないか?…このような心配ばかりが頭をよぎり、今日は告白するぞ!と決めた日のデートは朝から落ち着かない。


勇気を振り絞って、お付き合いを申し込んだ結果、OKの返事がもらえた。わーい、わーい、やったーやったー!!!頑張って言った甲斐があったね。
 
晴れて正式なカップルになった俺たちは、他のカップルがいるような休日の公園に繰り出した。ベンチに座って楽しく話すカップルもいれば、芝生に寝そべっているのもいる。俺は歩きながら彼女と手を繋いだ。暑さからから、彼女の手は少し汗ばんでいるようだ。と、思ったら「実は私男性とお付き合いの経験があまりないから、手を繋ぐことが緊張しちゃって」ということだった。
 
えー、いい年齢なのに、お付き合いの経験少ないの?もしかしたら、彼女は俺を騙しているかもしれない。これでは、夜になってキスをするとかは、絶対無理じゃん。つまんない。
彼女のお願いで俺たちは手を繋ぐのをやめて、公園を散策した。時折ベンチに座って話をしたりして。
 
俺たちは、その後頻繁に日帰りドライブデートをした。このデートは本当に楽しかった。だた、俺は手を繋ぎたかったけど、またフラれるのが怖くて、二人きりの場所でも手を繋ぐことはなかった。

あの時、手を繋いでいたら彼女はどういう反応をしたのか、受け入れてくれたのか、拒否されたのか。

 

彼女は、高校まで女子校で過ごし、大学は共学だったが男性への免疫がなかったこと、彼女の大人しい性格が災いして、そのまま大学生活を終わらせてしまったとのことだ。
よく聞く話の一つだよね。相談所みたいなところに登録しないと、男性と会う機会ないからとも言っていた。
また、彼女の話を聞いていると、努力とかして頑張るくらいなら家で漫画読んでた方がいいという、怠けものを絵にかいたような人だった。向上心とかは全くないようだ。
向上心?別に、特にそういうものはないし、人に抜かされても何も感じないし、というのが彼女の言い分だ。
 
俺はこの考え方がうらやましくて仕方がない。俺は小さい人間だから、すぐ世間体とか、周りの目を気にしちゃう。なので怠け者なりに頑張るのだが、やはり限界というものがある。
それなのに、彼女は「自分は好きな道を楽に生きていく」、と言っているのだ。素晴らしすぎる。俺もその考え方に従いたい!!


でも、この二人が結婚すると家が傾かないか?今日が楽しければいいよね、とキリギリスのみの家族は危険すぎる。路頭に迷う。どこかにアリさんはおらんのか!?
もしかして、彼女は怠け者ではなく、実はすっごいお金持ちで勝ち組なんではないだろうか?だから、自由気ままに生きていくと言えるのではないだろうか。
 じっと彼女の話を聞いていると、お金持ちをイメージする表現や話題が出てくる。まさか、お金持ちだったりして。
話をしていくうちに、彼女はお金持ちであるという確信を俺は持った。
 
まさか、お金持ちでしょ?いいなぁーなんて言えないので、俺は黙っていることにした。この男金目当てかよ、ふざけるんじゃねーって思われても嫌だ。
 
そんなあるデートの帰り道の話しだ。
夜遅くなったが、エッチはおろか、キスも手を繋ぐのもない、俺としては盛り上がりに欠けるドライブデートの帰りだ。実家に住む彼女を自宅の前まで送ることになった。

次みぎー、そこの角ひだりー、あ、間違えたー、という平和的な彼女のナビに従い、俺は黙々と住宅街を走り抜けていく。どこの家も立派な大きい家だ。やはり、彼女はお金持ちの家のお嬢様に違いない。立派な住宅街を縫っていくと、他の家を凌ぐビルのような大きい家が現れた。

 

「あ、ここ。ここが私の家。ありがとう。楽しかった」
と言って彼女は、降りて行った。
 
お金持ちどころではなかった、
大金持ちの家のお嬢様だったとは!!。
だから、全てに余裕があるんだ。なるほど、なるほど。俺は全てを理解して、納得した。まさかこんな大金持ちを当てることになろうとは、思ってもみなかった。
 
でもさ、結婚ってお互いの家族のこともあるわけだ。
庶民の俺と彼女の家が釣り合うのか?結婚となったとき、彼女の両親は俺のことをどう思うのだろうか??など、俺の悩みはどんどん増えていった。

 

Mちゃん登場

俺がMちゃんと知り合ったのは、とあるお見合いである。ほのぼのした感じが可愛くて、申し込みをして会ったという一般的な流れだ。
Mちゃんとは都内のホテルのラウンジで会うことになっていた。このホテルの周りには、他にラウンジらしいラウンジがないからか、いつも混んでいる。必ず渋滞が発生する高速道路の渋滞と同じで、このラウンジも渋滞を引き起こしていた。俺は素早い車線変更で、ラウンジの列に滑り込んだ。割り込みしてくる人はいないようだ。煽り運転は皆無だ。平和な渋滞だ。Mちゃんが来る30分も前に並んで場所取りをするというのは、渋滞が嫌で早朝に出かけるようなもんだ。ラウンジの周りには男との待ち合わせを待っている女子が、これまたたくさんいる。
このラウンジも他のホテル同様、周りが非常に広く、さらに柱が多いので見つけにくい。シャイな女子が柱の陰に隠れていたら、見つけられない。俺はかくれんぼの鬼となり、出会いの鬼となりMちゃんを探して見つけ出した。
 
Mちゃんは、非常に緊張しているようで、ロボットのようにぎくしゃくしていた。こういう場合は、プロフィールに書いてあることに沿って話をした方がいいということを俺は知っていた。そしていつものごとく、要所要所で、ドラムのシンバルのごとく軽いジョークを入れた。俺はドラマーとなり、彼女は演奏家となり、俺たちは楽譜通りに演奏をしていった。当然、ぎこちない演奏だったけど、俺は満足していた。


さて、このプロフィールに沿った話をされると、相手はどう思うのだろうか?
そんな質問すんなよ、プロフィールに書いてあるだろうが!となるのか、

はたまた、予定調和ということでこれが王道なのだろうか?
そうなると、プロフィールに記載されていない話をすることは、相手を混乱させるだけになるのか。

いやいや、まずはお互いのフィーリングなんだから、レストランのバイキングみたく話したいことを話せばいいんだよ、が正解なのか?
 
幕の内弁当がいいのか、松花堂弁当がいいのか、バイキングがいいのか…結局はその時の気分、空気で決まるのかな、と俺は結論付けた。
俺はこの考えが今でも正解だと思っている。
一度他の人がどういう話をしているのか、聞いてみたいもんだ。
 
ちなみに、相手がぎこちないと、こちらもぎこちなくなる。俺は雰囲気に押されるほうなので、この空気に飲み込まれてしまい実力を発揮できず失敗することが多い。Mちゃんが唱えた呪文「ギコチナクナッテシマエ」を食らって、HPが一気になくなった。俺はそれでも戦った、そして肩を落として傷ついた身体を引っ張って帰宅した。
彼女の呪文さえなければ、俺は勝っていた。毎回そんなことを思っているので、自分のバカさ加減に呆れてくるのだが。


ダメ元で俺は「交際希望」の旨をシステムに入力した。ところが、予想に反して彼女からも「交際希望」が来ていて、俺は彼女の連絡先をゲットした。瀕死になって戦って得たものは、大きかった。
彼女は電話でも、ぎこちない呪文を唱えてきた。しかし、俺は抗体や呪文を跳ね返す能力を身に着けていたので、HPがなくなることはもうなかった。
 
Mちゃんと食事の日、俺は仕事の関係で15分も遅刻をしてしまった。いくら、途中で彼女にお詫びの連絡を入れていたとはいえ、大失態だ。JRでは、1分遅れると、遅延事故になるらしいので、俺はJRで働くことはできない。学生の時JR東海に入りたかったが、エントリーシートで落ちた。理由はこれだったかもしれない。そんな俺を快く迎えてくれたMちゃんと、二人でメニューを覗き込んだ。優柔不断な俺は、なかなか選ぶことができないが、1回目のデートでそれがばれてはいけない。なかなか選べないってことは、どれを頼んでも同じだろう。
適当に3つくらいメニューを挙げて、彼女に選んでもらった。これなら、優柔不断とは思われない、我ながら姑息な作戦だ。
 
この初デートは、お互いのことをさらに深く知ることができるチャンスだ。Mちゃんは、大人しいのんびりした性格の方のようだ。
この後、俺はMちゃんと数回デートをすることになるのだが、そこでMちゃんの本性が分かってくることになる。

 

 

名古屋ちゃん、上京!後編

俺の予想に反して、美術館は長蛇の列だ。俺は名古屋ちゃんに試されてる。こういう時こそ、冷静に対応をしなくてはいけない。そして、待ち時間を退屈させないのが、俺に課せられた使命だ。現状把握、原因解明、対策というのが仕事のステップとしてあるように、このデートもそれに従えばいい。
俺は名古屋ちゃんに断りをいれて、列の最前列に行き混み具合と、原因を確認した。原因は人気だからなのだが。
俺は、さもしっかり調べてきたぜという様子で、名古屋ちゃんに偵察の結果を報告した。
 
人気だから混んでるよ
 
誰もが納得の話だ。これで、異を唱えるやつはそうはいない。
俺の簡潔な説明に納得した名古屋ちゃんと俺は、少し動いては止まるを繰り返す列の中で、他愛もない話を続けた。
 ここで成功する秘訣を披露しよう。
退屈させないために面白い話題を出さないといけない。しかも、発展性がない話題はNGだ。また、ずっと喋り続けると、鬱陶しさしかないので寄せては返す波のように陰陽をつけなくてはならない。
そのために、行列に並びました時用に、予め話題を用意しておきたい。
普段見たこと、感じたことをネタとして持っておこう。
多少のデフォルメは、問題ない。どうせわかりゃしないさ。
 
しかし、俺はこの時ネタは全て出尽くしていた。撃つ弾がないのだ。銃という口だけあっても、役に立たない。本当は、もっとネタはあるのだが、初デートで、相手に嫌われない題目が見つからなかった。
この世で見つからないものは、宇宙人、カッパ、ネッシーとなっているが、この日をもって、嫌われない話題が仲間入りした。
 
空っぽの頭をフル回転させて、行列に並んでる時、飛行機のようにタダ静かに乗ってる時は何をするのか?といった話題を考えた。
レオナルドダヴィンチでも発明できなかった話題だ。特許なんてものはないから、デートで使ってください。
 
結局1時間ほど並び、やっとこさ美術館の中に入れた。彼女の趣味をこの時間で観察することにした。名古屋ちゃんが立ち止まる絵画を、俺もじっくり見たが絵心がないから、良さが分からない。
ここで下手な感想を言ったら、バカと思われるかもしれないから黙ってるしかない。

 

この美術館広すぎだよ、どこまで歩かせるんだよ。ずっと並んで立ちっぱなしで足が疲れてるのに、まだ歩かないといけないのか。足は疲れるわ、退屈するわで、眠くってきたよ。他にやることがないので、俺は絵を見つめる名古屋ちゃんの横顔を、じっーと見ることにした。
おっ、この角度で見ると可愛いぞ、まつ毛長いねー、肌少しかさついてるね、なんて観察していた。余計なお世話だよ。
そして、たまにコメントをする彼女に、相槌を打って、私もこの絵関心がありますよアピールをする。


このように、趣味が全く違う人同士結婚したらどうなるのだろうか?
異なる趣味があるから視界が広がるという意見もあれば、趣味が合わないと一緒にいても破綻するということを言う人もいる。
俺の考えは、趣味が違くても別にいいんじゃね?である。
違う趣味同士で結婚してる人は、たくさんいるしね。でも美術館は辛かった。
 
 
全部見るのに確か、1時間半くらいだったかと思う。眠くて疲れていた俺には、長い時間に感じた。
美術館を後にした俺たちは、疲れた身体を休めるためにホテルではなくカフェに入った。疲れたからちょっと休んで行こうよ、とは言えない。ちょっと疲れたからお茶でもしましょう、が適切な表現だ。
ケーキセットを頼み、お約束の半分づつにして親近感を増す。
疲れからか口数が少なかった俺たちだが、ケーキを平らげる頃には元気モリモリに復活だ。
 


実はここから、覚えてないのだ。

ケーキが終わった頃には夕方だったはずだ。彼女の帰りの時間を考慮して、早目の夕食にしようと考えていたが、お互いお腹いっぱいになっていたから、夕食は食べなかった…それとも何か食べたか?
思い出せない。帰りは品川で彼女が新幹線のために走って去って行ったことを覚えてる。その後、彼女から無事新幹線乗れたよー、楽しかったよーとLINEが来た、ここは鮮明に覚えてる。そして、意気揚々と俺も帰宅した。
 
次の日からもLINEのやり取りは続いた。遠距離の恋人はこういう生活をしてるのか、ふむふむ。これはこれで良いじゃないか。しかし俺は、他の女性とも会おうとしている、つまり彼女もまた然りで、他の男と会っているわけだ。
のんびりしているわけにはいかないし、この遠距離という不利な立場を考えれば、彼女は地元の名古屋の男性と頻繁に会うだろう。
LINEという文字だけのお付き合いでは、そのうち終わってしまうだろう。
振り返ると、彼女からの返信は以前より素っ気なくなっている。
そこで、特にこれといった用事はないのだが、俺は電話をしてみた。
すぐに電話に出てくれた彼女と、少しの間話をしたが、話題が出てこない。
これは、彼女と交際を続けること自体に無理があるようだ。どっちが悪いとかではなく、相性の問題だ。遅かれ早かれ終了になるに違いない。
 


俺は交際終了にすることに決めた。
こんな時にだけ律儀な俺は、自分からふるのは申し訳ないと思い、彼女からの交際終了を待つこととした。
形だけとは言え、彼女が男にフラれたと思わせないようにね。
自己満足だけど、遠距離の中俺に付き合ってくれたせめてものお礼だ。

名古屋ちゃん、上京!前編

「交際中」となった名古屋ちゃんに、俺は早速電話をかけた。

お互い仕事をしているから、電話は20時過ぎだ。彼女はこの時間はもう家にいるだろうか?もしかしたら、他の男とデートかもしれないし、合コンで一気飲みをしているかもしれない。

昨日の僅かな時間で感じ取った彼女は表向きかもしれない。実際はもっと遊んで、ぶっ飛んでるかもしれない。俺はぶっ飛んでる方が好きなのだが。

最初の電話で、ぶっ飛んだことは言えない。

 

彼女に電話で伝えることは、昨日のお礼、次に会う日程の調整、そしてひつまぶしは美味しかった、この3本だ。だってそうだろ?ひつまぶしは、彼女のアドバイスなんだから。彼女のセンスを褒めないといけないだろ。

 

すぐに電話に出てくれた名古屋ちゃんの声は、改めて聞くと可愛いらしい。昨日会ったときは、そこまで注意を払えなかったけど。

俺は、名古屋は今何時ですか?とボケてみようかと思ったが、滑ったら大変だ。取り返しがつかない。こんなとこで敢えて事故を起こす必要はない。

 

電話で話し始めると、先日の楽しいお見合いのことを思い出した。彼女も昨日楽しいと感じてくれていたらしい。そして、今度は、彼女が東京に来てくれることになった。これは嬉しい。東京なら案内もできるし、ゆっくり話をできる場所も、美味しいお店も知っている。新幹線代が浮くのも嬉しいのだが。

そして、最後にひつまぶしのお礼を言った。名古屋ちゃんのアドバイスに従ってひつまぶしを食べたらおいしかったよ、ありがとうございます。

 

ひつまぶし美味しかったんだ、よかったぁ、実は私そんなに食べたことないんだよね。

 

うそだろ?まぁ、おいしかったから良しとしましょうよ。

 

 

彼女と会うのは翌週の土曜日となった。今から2週間後が楽しみだ。

俺は、いつもこのデートの日程が決まったとたん、悩んでしまう。

デートまでの日って、連絡取りあうもんだよね?それって、頻度どれくらい?

「交際中」だからといって、毎日の連絡は相手にも重荷になるよね?そもそも、毎日、送る話題あるか?作るしかないか。週に23回の連絡くらいにしておくのがいいのかな、話題は…当たり障りのない、こんなことがありました程度にとどめておくか。

 俺はこの難問に、昔からずっと向き合ってる。

いつか、誰かに婚活秘伝を教える日までには、この解答を準備をしておくから、これから婚活をするみんなは心配しなくていい。

 

しかし、今回は、東京・名古屋間の交際だ。

東京で何をしたいか?とか、名古屋はどうなの?と、色々話題はあるので、そこまで苦労をすることはないだろう。

彼女の希望で、食事をした後、都内で開催されている美術展に行くことになった。彼女の注文を聞いて、早速俺は、前後の食事の時間などを計画した。こういう綿密な計画を作ることが、俺は大好きだ。彼女のためのフルカスタマイズだ。気合が入る。

しかしながら、途中で飽きて「あとはノリでいくか」と尻すぼみになるという慣習は、今回もちゃんと適用されて、途中でさじを投げてしまったことは言うまでもない。

だけど、常にいくつかの案や、周辺のお店等の情報はインプットしてあるから、柔軟に対応できるというやつだ。彼女のための気まぐれデートプラニングだ。

 

名古屋ちゃんに会うまでの2週間、俺はしつこくなく、それでもって忘れられないような間隔で彼女とLINEでやり取りを続けた。俺の長くて深い経験からすると、相手がスタンプを送ってきたら、それは一歩距離が近づいたと解釈してまず間違いない。

 

名古屋ちゃんとのデートの日がやってきました。

東京駅に到着した名古屋ちゃんと、再会をした。おしゃれはしているが、以前に比べれば、ぐっとカジュアルだ。これが本来の名古屋ちゃんなんだろう。こっちのほうが親近感が湧く。

まずは、近くのレストランでお昼を食べながら、話をすることにした。

この2週間の間に起ったことや、お互いの職場の話などをした。彼女と俺は業種が違うから、職場の風土も全く違うので、聞いていて楽しい。

いつもの彼女の独特な表現で、俺は笑ってばかりだった。俺も、ジョークをかましながら、学生時代の話や、趣味の話をした。お見合いの時と話題は似ているが、今日の方が話は盛り上がるし、活気があってよろしい。

距離はぐっと近づいたけど、このデートは「結婚相手としてはどうか?という視点からの、相手を知ること」なのだ。

羽目を外すわけにはいかない。お持ち帰りも、ワンチャンもない。実に非情なデジタルなものなのだ。

 

今日のデートの行き先の一つである美術館の時間が近くなったので、俺たちはその場所に向かった。俺は美術には疎いので、美術展にどれだけの人がいるのかは想像できない。どうせ、そこまで人はいないだろう、と。

目的の美術館について、驚いた。 長蛇の列だ!!

 

後編に続く

地方遠征、いざ出陣!

お見合いサイトでは、居住地別で検索することができる。関東の人は関東で探すのがナチュラルだ。しかし、俺は知っていた。地方の人で将来は東京に住むことを夢見る女性が数多くいることを。また、特に将来住む場所にこだわりがない人も多数いることを。

みんなは知らない真実だ、たぶん。

俺はある日、ポテトチップスを食べながら、スマホでペラペラお見合いサイトの女性たちをチェックしていた。この日のポテチはコンソメパンチだ。普段ならノリ塩を食べるのだが、この日はどういうわけかコンソメパンチだった。スマホの画面が汚れるのが嫌いな俺は、右手でスマホ、左手でポテチだ。俺は画面が指紋とか皮脂で汚れ切っているやつが許せない。合コンとかでそんなスマホをだされたら、その時点でアウトだ。心がせまいとか、潔癖とか言われるが、別にいいじゃないか。

 

で、俺は思った。会いたい人がいるなら自分が地方遠征に行ってもいいんではなかろうか?と。

北海道から鹿児島まで新幹線が通ってる時代だ。1時間のお見合いのために往復4時間かけるなんてばからしい?いや、面白いだろ。今しかできない経験だ。

しかし、行くからには「会いたい」と思う女性で、且つ「会ってやってもいいぞ」という2つの条件が必要だ。これは難しい。

今思えば、交際になったときに、この距離が足かせになるのだけど、俺は全くそんなことを考えていなかった。さすが俺だ。後先考えない行動力。若さは不可能を可能にする、無理が通れば道理が引っ込む。

 

ペラペラ見ていると、名古屋に素敵な女性がいた。見るからに可愛い。名古屋まで行く以上は、見定めはしっかりしないといかん、失敗は許されない。

俺は宝石鑑定士となった。そしてスタントマンになった。

写真を拡大したり、斜めから見たり、光を当てたりと、そこになんでも鑑定団がいたら、さぞ真っ青になっていたに違いない。

記念のお見合いかもしれない、いや、意外と向こうは俺を待っているかもしれない、もっともお門違いで何も起きないかもしれない、くよくよ悩んでいても仕方ない。ということで、俺は申し込みボタンを押した。何度も言うが、俺は優柔不断だ。優柔不断選手権があれば、上位30位には食い込めるだろう。1位にはなれないのかって?

1位になるやつなんて、どうせ何も決められない男だろ。俺はそういう、決められない男が嫌いだ。俺みたいに即断即決になってほしい・・・・あれ?

 

数日後、その名古屋ちゃんからOKの連絡が来た。おお!!懸賞に当たった時の気分だ。ロト6で1000円が当たったときの気分だ。それ以上の喜びは今まで味わったことはない。よくよく考えれば、遠く離れた東京から来る人間に会いたいと思ったもんだな。行く方も行く方だけど、会う方も会う方だぜ。

 

当日、俺は新幹線に飛び乗った。2時間弱で到着のようだ。

俺がミスター付け届けと呼ばれていることは、意外と知られていない。お土産はちゃんと用意している。もっとも、どこにでもあるようなお菓子に、ただ「東京」と印刷したようなもんだが。

 

新幹線は快適だ。ビジネスマンもいれば、家族連れ、友達同士もいる。お見合いに行く人はいるのだろうか?俺以外に1人くらいいてくれよ。寂しいだろ。

名古屋に着くと、指定されたラウンジに向かった。おそらく名古屋ではメジャーなお見合いスポットなのだろう、しかし外様の俺には難しかった。いや、本当に難しかった。どうして、名前は立派なのに、入り口が分かりにくいエレベーターなんだよ。ドラクエの隠しドアを見つける方が容易だ。

到着して10分ほどすると、彼女がやってきた。ふむふむ、思った通りだ。俺は呪文のように暗記している彼女のプロフィールに沿いながら、時折、名古屋初めてなんすよ、と合いの手を入れながら話をした。彼女は、独特な表現で仕事のこと、家族のことを話してくれた。大した内容でなくても、彼女の話し方、表現一つで面白い話に大変身だ。お、その言い回し使わせていただきまっせ、ここでその表現を使うか、ふむふむ…勉強になる、と技を盗んであっという間の1時間だった。話し上手を自称していた俺だが、本当に勉強になった。

彼女は、折角名古屋まで来たのだから、何か食べて帰れという。そうだな、確か名古屋には名物がいくつかあったはずだ。彼女のアドバイスに従い、俺はひつまぶしの店で一番高い料理を注文した。だって、もう来ないかもしれないじゃん。彼女可愛くて楽しかったなぁ、もっと会いたいなぁ、彼女はどう思ってくれたかなと、俺は反芻していた。

ひつまぶしが運ばれると、俺はひつまぶしユニークな食べ方の注意書きを読みながら、ウナギを味わった。彼女のことなんてどこ吹く風だ、ひつまぶしが美味しいだんから、それで十分だろ。

 

帰りの新幹線の中で「交際希望」を送った。翌日、彼女からも「交際希望」となり、晴れて交際となった。いやはや、名古屋までひつまぶしを食べに行った甲斐がありましたよ・・・・あれ?

2日連続Rちゃん、クールちゃんデート 後半

初デートで、うっかりロマンチックすぎるレストランを選んでしまった俺は、本当に焦っていた。こういう場合は深呼吸をするといい。頭の中ではラジオ体操がかかっている。外は夜9時だけど、頭の中は朝の6時半だ。

小学校の時、ラジオ体操に毎日参加するというイベントがあった。参加するとスタンプを教えてくれて皆勤を目指す。俺は毎日雨になることを望んでいた。厄介なものは避けようという小さい性格は、大人になった今で」もしっかり引き継がれている。ちゃんとした大人にはなれなったようだ。

 

通されたテーブルの奥に彼女を座らせてメニューを眺めたが、昼にあるメニューと様変わりしている。昼と共通だったのは、サラダ1種だけだった。俺は、正直に、昼間に来た時とだいぶ雰囲気が変わっていて、驚いていることを彼女に告げた。彼女は、このお店素敵でいいじゃんと、俺の失敗を慰めてくれた。彼女の優しさに、助けられて少し安心した。

 

サラダと、肉と、パスタを注文して、前回初めて出会った異業種のパーティの話や、仕事のこと、プライベートのことを話した。美味しいことになっている料理、俺のトークで何とか体裁を整えたゴハンデートだったと記憶している。

彼女の様子からして、俺のことをそれなりに興味を持ってくれているようだ。半分ずつ分け合ったデザートも美味しかった。

 

少し話がそれるけど、デザートのお皿についているソースとかあるじゃないですか?あれって飾り?それとも、ケーキとかフルーツを、そのソースに絡めて食べるものなの?あれの正しい扱い方知っている方、教えてくださいまし。

 

俺は、デザートの時間が大好きだ。甘いものが好きだということもあるのだが、一番の理由は、二人で悩めるということだ。初デートで二人一緒に悩むなんて、そうないはずだ。デザートのメニューを見て、どれにする?あー、それもいいよねえ、こっちも捨てがたい と二人で悩む時間。で、最終的には、2種類注文して、半分ずつにするって、楽しい。二人の距離が近くなった気がする。そう思っているのは俺だけか?

尚、二人で悩むデートと言ったら、水族館ではないだろうか?

深海魚コーナーとか、なんか小さい水槽に入っている魚をみるやつだ。あれ?どこにいるんだ?土の中かなぁ、と二人で水槽を上から下から眺めたりする。

で、見つからなくて「もういいや、次行こう」となる。

 

かなり遅い時間に店を出たので、俺は車でクールちゃんを近くまで送ることにした。ちょっとしたドライブデートだ。車の中では、彼女がひっきりなしに喋っていた。途中から少し飽きてきたけど、ここは最後まで聞かないといけない。

あっという間に、彼女を降ろす場所に到着した。15分くらいだったかと思う。俺は、また遊びたいからいつ会えるのか?と訊いた。

これ、結構緊張するんですよ。だって、その場で、うーん分からないなぁとか、あーそうねぇと興味がない返答されたら、心にダイレクトに刺さるじゃん。俺はそれに耐えられるだけのハートは持ち合わせていない。だから、緊張する。怯えているというのが正しい表現かな。

 

しかし、こんなに盛り上がっているからクールちゃんは〇〇日なら空いてるよ、と言ってくれるに違いない。

そんな、彼女の返答は「実家に戻らないといけないんだけど、ちょっと日にちが見えないから、また連絡するね」

でした。

そうかぁ、彼女は実家に帰らないといけないのか。仕事も忙しいのに、本当に大変だな。それなら、彼女からの連絡を待ちましょうよ。

と、バカ正直に受け止めてルンルン気分でアクセルを踏んで、帰宅した。

 

その彼女からの返答ですが、未だにありません。まだ実家に帰っているのでしょうか。

 

 

さてさて、ドタキャンしたRちゃんからは、数日後連絡がありました。

この前はごめんねーという、薄っぺらい抑揚のない連絡です。LINEなので文字で書いてあるわけだが、それでも薄っぺらさは隠すことはできない。俺はそういうところに、なぜか敏感だ。

「〇日なら空いてます、どこにでも行くので、場所を指定してくれ」と言う。彼女としては前回のお詫びのようだ。

以前予定していた店に俺は興味があったので、そこで彼女と会うことにした。もはや、顔なんて忘れかけている。どんな子だっけ?

まぁ、会いましょうよ、折角なんだからさぁ、良いことあるかもしれないじゃん。

 

俺は重い腰を持ち上げて以前の店で彼女と食事をすることにした。

それがですね、話題がぎくしゃくするんですよ。お互い一生懸命頭を捻って話題を出すのです。そんなの楽しいわけない。出てきた食事の話をしても、盛り上がらない。

こうなったら、必殺技のデザート半分こ作戦だ。司令官は、この効果的な作戦を発令した。この作戦の特徴はデートの後半でないと発令されないということだ。お昼のケーキセットのお茶の時間は別だが。

破壊力がある作戦の前では、誰だって笑顔になり距離が近づくものだ。

しかし、彼女はその一枚上をいっていた。

「私、お腹いっぱいだから、大丈夫」。

あんた、そこまでして早く帰りたいのかよ!!俺もだけど。

 

最後までぎこちないまま、さっさとお別れをして彼女と反対方向に歩き始めた。

で、仲人に電話をして「ちょっときいてよー、デートはどうだった?だって??最悪だよ、交際終了にしてくれ。向こうから終了って言われると腹が立つから、先にこっちから断ってくれ、頼んだよ」

 

愚痴をごちゃごちゃ、話しているとお腹が空いてきた。マックのポテトが食べたい。さっき、新橋駅にマック会ったけど、戻るのめんどくさいな、この先しばらく歩けば、見つかるだろ。と、結局5駅分ほど歩いたけど、マックを見つけることはできなった。

俺は家に帰ると、疲れたこともあってふて寝をした。

お見合いだけじゃ、相手のことは全く分からないものだなと、学んだ1日でした。

 

2日連続Rちゃん、クールちゃんデート 前半

1ヶ月前に約束したRちゃんとのデートの日がやってきた。
俺は定期的にRちゃんとやり取りをしていたので、会うのが2回目という感覚はない。顔を忘れないようにお見合いサイトで、怖がられる程、彼女の写真とプロフィールを確認している。暗記済みだ。
写真でもお見合いでも上品な雰囲気がある。俺は上品、半額という言葉に弱い。
和食が好きということで、お洒落でデートに使えるカジュアルな和食屋を予約していた。場所は銀座だ。銀座にもこのような財布と男に優しい店があるとは…本当に助かります。
 
会う前に、近場でウインドウショッピングをしようと決めていたので、待ち合わせ2時間前くらいに有楽町に到着した。
まずは駅前のビックカメラだ。この店はいつ来ても混んでいる。俺は買う予定もないのに最新のスマホをチェックして、話しかけてきた店員さんとお話をして、必要もない冷蔵庫を見たりして遊んでいた。
 
なんやかんやで、そろそろ銀座に移動っすかという時間が来た。有楽町から目的の店までは徒歩で10分程度だ。
俺はトイレで髪型と財布をチェックした。これで抜かりはない。今日はデートなのだ。Rちゃんが、俺の髪型を細かくチェックするとは思えないが、髪型くらい自己満足させて欲しい。財布はちゃんとお金が入っているかだ。これは、うっかりすると、致命的なので細心の注意が必要だ。デートでは、奢るというのが、鉄則だ。

この鉄則は、マリー・アントワネットが決めたことを、歴史の時間にならった。パンがなければ奢って貰えばいいじゃない。

余計な事言いやがって。今日は和食なんだよっ!
 


銀座に歩き始めた頃、Rちゃんから電話がかかってきた。このタイミングでの電話は、遅れますごめんなさい だ。
しかし、彼女から発せられた言葉は、「朝から体調が悪いから、キャンセルさせて欲しい」ということだった。
 
 
待ち合わせ20分前なんですけど…。
 
 
今電話するか?朝から体調悪いのに、今になってキャンセル?体調を頑張ってなんとかしようとしてくれていたんだね。次の機会にしようね
紳士的に返答して、店にキャンセルの電話を入れた。
全く面白くない。当たり前だ。
テンションは下がり、髪型で喜んでいた自分が惨めになった。そして、暇になった。
これは、お断りされるやつだ。彼女も、お見合いではとりあえずOKしたけと、やっぱり気が変わったというやつだろうか。やることがなくなったので、トボトボと帰宅した。
 
翌日、体調を気遣うLINEを入れておき、今晩のクールちゃんのデートに注力することとした。待ち合わせ時間は夜の9時だ。遅いけど、お互いこの時間が都合が良かったんだから、仕方あるまい。ゴハンが終わったら、キスくらいできるかもしれない。俺は邪な考えを持ちながら、車で店に向かった。
現れた彼女は、やはり綺麗だ。カジュアルな服もセンスがあって、俺好みだ。絶対キスしようっと。彼女も期待しているかもしれない、いやしている。根拠はないけど。
店は、ランチで来たことがある店だ。ここは、かしこまらないお洒落な雰囲気が人気だ。夜は初めてだから、どんな様子だろうか…しかし、俺は中に入ってたまげた。座っていたら椅子から転げ落ちるほどで、立っていたら、膝から落ちる程だ。
なんと、中はお洒落なかしこまった雰囲気になっているのだ。昼間とは180度違う雰囲気になっている。カップルしかいない。本当にカップルしかいない。まぁ、俺らもカップルなんだけど、付き合ってるか付き合ってないかの違いは大きい。
初回のデートで、これは明らかにやりすぎだ。彼女だって緊張してしまうし、俺は無意味につま先で歩いてしまう。今回は緊張をほぐし、もっと打ち解けてキスしようよという話だったのに、これはないぜよ。
 
続く。